京都大学大学院医学研究科環境衛生学分野

京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻環境衛生学分野

研究指導と大学院について

環境衛生学分野では,大学院医学研究科において、修士課程(社会健康医学系専攻)と博士課程(博士後期課程:社会健康医学系専攻あるいは医学専攻)の大学院教育を実施しています.研究室に大学院生の参加を歓迎しています. 修士課程はMaster of Public Healthの取得を目指す専門職大学院を主に担当しており,それは日本で最も長い歴史を持つtaught courseです(1年と2年のコースがあり、そこでは研究も実施します).博士課程は社会人大学院生も含めてご案内しています(社会人は単位取得方法や予定について詳細相談を要します).また,他学からの大学院生の 指導委託受け入れも実施しています.それぞれを以下に書きます.

※次年度以降の修士課程(専門職学位課程)および博士課程の進学相談を受け付けています。学問的バックグラウンドは問いませんので、連絡(contact(at)hyg.med.kyoto-u.ac.jp)を下さい。オープンキャンパスにおける説明会のvimeoはこちらです。


立ち上げ数年での教室の目標設定は,多くの欧州・米国の公衆衛生大学院の競合研究チームと比較して,こちらで研究トレーニングいただいたほうが体系的で良質かつ大量の研究経験を詰める体制を達成・維持することです.多くの疫学研究を志す方が,現状でより良い教育が得られる欧州と米国を目指されています.特に,公衆衛生修士課程では英米で多数の教員が極め て良質の教育を展開していますので,海外のほうが良い経験を得られるものと思います.しかし,研究面では一概に欧米が良いとは考えていません.日本にはよ り良い研究機会があり,私たちで濃密かつ高質な指導をすることによって,極めてレベルの高い研究を多数経験してもらうことが可能です.特に理論疫学に特化 した当教室では一分野に限って一気に第一線のレベルで闘ってもらう,ということが可能ですので,それを保証できる研究体制を整えています.この教室は外資 系企業よりもより中身の技術的成長と成果を重視しています.やる気のある方ならば,(表現に語弊があるかも知れませんが)既に中途半端な欧米の研究チーム よりも良い業績を出せるよう機能しています.ボストンやロンドンにある大手には教育面では勝てませんが,研究面で負けない体制を敷こうとしています.
(文責:西浦 博)

公衆衛生学修士:MPH (Master of Public Health)

次のような実力を身につけることを目標に据えて修士課程を構築しています:修了にあっては、「社会における人間」の健康や疾病に関わる問題を探知・評価・分析・解決する知識、技術、態度を有する高い素養を身につけるとともに、先端的課題の解決に取り組む総合的な能力および高い責任感、倫理性を備え、以下の点に到達していることを目安とする。
1.社会健康医学に関わる実務・政策・調査・教育において、専門的かつ指導的役割を果たすことができる。
2.人々の健康に関わる経済・環境・行動・社会的要因について知識を深め、新しい知識と技術を生み出すことができる。
3.生み出した新しい知識と技術を健康・医療に関わる社会の実践、方策と政策に還元できる。
4.社会健康医学に関わる優れた教養や各専門の知識と技術をもって、個人・組織・地域・国・世界レベルで貢献できる。
講義は,必修科目・コア科目と一定数の選択科目を平日昼間に開講しています.京都大学のMPHコースでは、現状、ほぼフルタイムでの進学を必要とします.

原則、2年コースで運営をしていますが、既に社会医学系の職務経験や研究経験を要する医師・歯科医師等の場合には事前に相談を経て1年コースとして受講することも可能です(但し、2年の課程を1年で経るだけですので研究時間等の捻出を要します)。ただし、研究志向のMDやDVM、DDSは1年制MPHの活用を推奨しますので、事前にご相談を下さい。

社会健康医学博士:DrPH

3年間のDoctor of Public Healthのコースです.日本では取得できるところが少ない学位です。公衆衛生の専門家として研究面での貢献を目的とする方のためのコースです。ディプロマポリシーは次の通りです:修了にあっては、「社会における人間」の健康や疾病に関わる問題を探知・評価・分析・解決するために必要な学術課題を考究する素養を身につけることが基本となる。また、研究課題を自ら設定でき、高度な学術研究を自立して実施できるとともに、先端的課題の解決に取り組む総合的な能力および高い責任感、倫理性を備え、以下の点に到達していることを目安とする。
1.社会健康医学に関わる実務・政策・調査・研究・教育において、高度に専門的かつ指導的役割を果たすことができる。
2.人々の健康に関わる経済・環境・行動・社会的要因について高度な知識を深め、新しい知識と技術を生み出すことができる。
3.生み出した新しい知識と技術を健康・医療に関わる現実社会の高度な実践方策と高度な政策に還元できる。
4.社会健康医学に関わる各専門の高度な知識と技術をもって、個人・組織・地域・国・世界レベルで貢献できる。

医学博士:PhD

4年間のPhDコースです.修士課程を経ていない医学部・歯学部卒業者はこちらが対象になります。言い換えれば、医師資格をお持ちの方が医学博士を取得することに対応している、ということです。実質的に実施する研究は社会健康医学博士と大きく異なりません。


最低限の到達目標

・感染症疫学の研究手法を学ぶとともに実際に疫学データを用いた解析を行います。

・大学院生自身が妥当かつ適切な研究を立案・実施できるような力を身に付けられるよう,指導します.


論文発表について

環境衛生学研究室では、研究の最終産物の1つとして、英文で国際誌に論文を発表していただきます。専門職学位課程(MPH)で1報、博士課程(PhD)あるいは博士後期課程(DrPH)では2報以上の英文論文執筆が必要です。英文論文の書き方やその編集の手助け、独立度合の増加を含め、教職員が全力で支援を行っています。学位の取得はもちろんですが、修了後に独立した研究者として生き抜くためにも、できるだけの研究メンタリングを実施します。


環境衛生学分野における学生の募集要件

専門職学位課程(MPH(2年・1年)コースの場合

・1年制では医師あるいは歯科医師の国家資格を有し、実務経験(2年以上)があること。2年コースは背景を問わない。

・2年間(ないし1年コースでは1年間)学業に専念できること(週末のアルバイトは可能)。

・研究や未来の方向性について明確な意識・意志をもっていること。


博士後期課程(DrPH(3年)コース)の場合

・京都大学のMPHで修得する疫学と統計学のレベル相当で最低限要求される知識・技術に習熟していること。

・3年間、学業に専念できること(週に1-2回の夜間と週末のアルバイトは可能、1か月限度のインターンは事前相談の上で1度可能)。

・既に研究を行ったことがある実績を有すること。

・自律的に研究を進めるだけの意志を持っていること。


博士課程(Ph.D(4年)コース)の場合

・医師、獣医師、歯科医師あるいは既にMPHを取得した(取得見込含む)医療の国家資格を持っていること。

・4年間のうち、3年間以上は必ず学業に専念できること(週に1-2回の夜間と週末のアルバイトは可能、1か月限度のインターンは1度可能)。

・研究を進める上で実務に関連した着想や強い意志、将来計画を持ち合わせていること。


お勧めしている目標

・研究者になると決めた方は,フルタイムの場合は研究で生活する実力が身に着くまで責任を持って指導します.感染症数理モデルの未経験者で、独立して研究 をするような専門的能力を身につけることを目標にする場合は、少なくともフルタイムで3年間(できれば修了後を含めて5年間計画)を費やしていただいて研 究トレーニングに励んでいただきます.

・日本の大学院博士課程学生は留学奨学金や奨励金への応募資格があります.特に,日本学術振興会の特別研究員(DC)に受かるよう論文指導をしており(早 くから論文業績をつけて合格しやすいよう戦略的に始動しており),合格した場合には月々の奨励金(20万円程度)を受け取りつつ,少なくとも1年間海外の 共同研究機関(欧州・米国)でトレーニングを実施していただけます.そのために数年がかりで計画的に準備をします.これまでに毎年の合格実績があります。


大学院教育全体を通じて当教室が他と違う点

・研究教育と指導を相当量で実施しています.
大学院教育では講義を一定数履修いただきます.時間はかかりますが,ありがちな「大学院教育が実質的に不在の状況」と比較して体系的知識を身につけていた だくことができます.研究面では「感染症の数理モデル」あるいは「感染症疫学」に相当に重きを置きますが,知識面・技術面では他分野についても広く知って いただかなければなりません.その分,雑務を最少化する努力をしています.
・研究教育の質と定期性を重視しています.
教授は多忙ですが,出張中でなければ,とても短くても(仮に1日数分であろうとも)博士課程学生とは1日1回は会って直接に話ができるように工夫していま す.研究が安定するまでは,週1回のミーティングを通じて研究教育を行っています.放置が好きな方には向いていません.責任を持って研究成果が出るところ まで面倒を見ています.
・世界で勝負していただくことができます.
修士課程では体系的知識を優先して進路選択をしていただきます.もし,その後に博士課程に進む場合ですが,博士号を得るということは研究者として生きると いうことになります.博士になられる方には,国外機関の実力・質量と比較した現状を理解いただき,目標を世界に据えた上でトレーニングしていただきます. 修了後,ある時から欧州や米国で勝負に出なければならない時が来ても,胸を張って1人で生きていくことのできる実力がつくまで,こちらではあきらめずにト レーニングであなたと向き合います.
・国際的視点をもって研究に臨んでいただきます.
修士・博士を問わず,研究現場での共通言語は英語です.セミナーは英語です.「英語が極めて苦手で一切なおりそうもない」と思う方には当教室は向いていな いかも知れません.他方,「これを機会に英語を鍛えるのだ」というやる気さえあれば,ついて行くことはできますし,こちらで最後までサポートします.
・学術的なバックグラウンドを問いません.
研究紹介にある通り,教室は数理 モデル研究ばかりではなく,特に修士課程ではアウトブレイク調査や臨床研究にも力を入れています.数理科学のバックグラウンドは問題にしていません.研究 室メンバーのバックグラウンドはバラバラで,医学・数理科学はもちろんですが,政治経済学や情報学,獣医学,生物学,物理学,保健・看護・臨床検査・放射 線技術,など様々な背景を持つ者で構成されています.数理モデル研究に進まれる場合であろうとも,実践的範囲においては,数理の実力はここに来てから磨け ば努力次第で改善可能です.

指導している研究分野

以下のうち,1-3の感染症関係を課題に研究に取り組んでいます.修士には概ね該当範囲で研究テーマの相談をいただき,博士課程では感染症疫学あるいは感染症理論疫学の専門家を志す方をお引き受けしています.
1.感染症疫学に関する研究
2.数理モデルや統計モデルを利用した理論疫学・生物情報学に関する研究
3.感染症を中心とする国際的な健康問題,国際保健に関する研究
4.リスク解析や人口学モデルなど数理モデルの応用研究
5.衛生学・環境医学研究全般(要事前相談)
現時点では,4のリスク解析は感染リスクが関係する範囲で,人口学研究は多状態モデル等のプロジェクトが関係する範囲で実施しています.疫学モデルから相 当に離れる数理モデル研究は守備範囲外です(それら研究や指導に資源を配分する余裕が現時点でないため).広く数理モデル一般を考えたい方やシステム生物学などを志望される方には不向きです.5に関しては感染症に関係する範囲内で相談をお引き受けしています.

教室での論文執筆とその方針

修士課程も博士課程も、いずれの場合も相談を何度も重ねた上で研究テーマを設定し、その結果を研究発表するまでの過程を大学院課程の一部としていることから、トムソンロイターで収録されている国際学術誌に原著論文を発表することを課しています。修士の専門職学位課程では1編、博士後期課程では2編以上の論文執筆を教室としてミニマムに据えています。修士課程では修了までに目処をつければ大丈夫です。もちろん、執筆においては教授が中心となって全面的に支援しています。また、博士後期課程における留学や勤務ですが、原則としてフルタイムでの大学院生としています(ただし、3年間の中で上記の目標を明確に満たせる場合には、それを念頭に相談には対応しています)。


教室外の若手研究者の受け入れ

同じ研究分野或いは関連分野を志す若手研究者は,所属によらず受け入れた上で指導を行っています.原則,現行の指導者から許可を得ていただくことが必要で す.研究内容に関してはできるだけ本務地のプロジェクトと関係しない課題について取り組むよう勧めています.事前相談をして下さい(メー ル:contact(at)hyg.med.kyoto-u.ac.jp).

試験や出願資格について

例年,大学院は修士課程・博士課程ともに8月の1回試験です.大学院の受験者は事前に相談を いただき,出願時のその旨をお知らせ下さい.前期の出願時期は6-7月頃です.出願資格審査が必要な場合(短期大学や専門学校の卒業の場合や海外の大学を卒業した場合など)は6月中に同審査が された上で出願することになります.

進学相談

研究室教員(教授・准教授・助教)に時間の約束を依頼いただけましたら進路相談に対応します.また,感染症数理モデルを志す方でしたら進路相談は京大の大学院志望でなくても結構です(その旨を事前通達して下さい).アポイント依頼時には,簡単で結構ですので履歴書を添えて連絡を下さい(メー ル:contact(at)hyg.med.kyoto-u.ac.jp)

小林さんの瑠璃光院

連絡先

京都大学大学院医学研究科
社会健康医学系専攻
環境衛生学分野
606-8501 京都市左京区吉田近衛町
TEL:075-753-4456
FAX:075-753-4458
E-mail: conatct(at)hyg.med.kyoto-u.ac.jp